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”心に響いた小さなナニカ”を記録に残すための、ひと手間加えて”心に響く小さなナニカ”を生み出す場

【読書感想】舟を編むを読んでみた

すごく有名な小説。今更読んだ。★4〜5つ、すごく良かった。

さて、まず初めにあなたに問いたい。あなたの心の中の辞書はどうなっていますか。

舟を編む (光文社文庫)

舟を編む (光文社文庫)

 

 概要は、いらないよね。

心に残ったところ、良かったところ

僕の最近求めていること。表現すること、について深く考えさせてくれる内容だった。特に以下3つについて焦点が当てられていて面白かった。

・異なる物事について共通点を見つけ出すこと

・物事を言葉で定義すること

・言葉を言葉で定義すること

・異なる物事について共通点を見つけ出すこと

 僕って、違う物事の共通点を見つけることが小さい頃から結構好きで。(正確には好きだったことを最近思い出した)一見違うように見えるのだけれど、実は同じものから端を発しているとか。例えば数学や物理の公式。一見別の公式に見えるのだけれど、紐解いていくと同じ公式にたどり着く。ちょっと見方を変えたり、新しい要素を少し含ませただけの違いなんだけれど、別の事柄を表したり。いろんな公式を学生の時に覚えるように言われたけれど、運動の第1から第3の法則さえ覚えておけば作れちゃう。あれ?んーなにが違ってなにが一緒なんやろ、と突き詰めていき理解した時の気持ちよさは、良いものだった。

 同じように、世に溢れる物事の中にある共通点を見つけ出した時にもテンションがあがる。例えば、仕事での新しいアイデア。課題が技術によって解決するのは、課題と技術が示す先の物事に共通点を見つけることができたからこそ生まれるもの。これも上記と同じくたまらなく気持ちいい。

・物事を言葉で定義すること

 気持ちいいことはいっぱい経験したい。でもなかなか気づけない。

 気づいたならば人に伝えたい。ただ、なかなか伝わらん。なんでや。

 数学や物理の公式は、すでに「言葉、文字」として定義されているかつ、物事をいろんな前提条件で縛った中でのものなのでわかりやすいけれど、世の中にありふれている物事はそうはいかない。例えば「今の僕の気持ち」なんかもっと複雑で、ふわっとしていて捉えどころがない。要は言葉で定義しにくいということ。

 よく僕はデジェブに見舞われる。「あ、これ前にもあったな」という感覚。皆さんも少なからずあると思うが。これは恐らく、過去に経験した物事を「文字や言葉」ではなく、「経験」として、しかも漠然と定義付けているからなのだと思う。過去の記憶が漠然としすぎていて少しでも似た何かがあると、同じ経験として脳が扱ってしまっているのではないかということ。

 言葉と文字は、人が得た物事を定義づけるための唯一の道具であり、個人が経験した物事を他人と共有するための唯一の道具なんだろう。(唯一は語弊があるかもしれない。一緒に物事を経験することで、感じ方は多少違えどある程度共有はできる)

 僕はそれを上手に使っていなかったから、経験を上手に整理できていないし、他人とも上手に共有することができなかったのだろう。

 本書の中で、料理人や辞書作りの仕事と、観覧車に共通点があると言う場面が出てくる。料理人の場合には、その仕事はどれだけ頑張って料理を出しても、結果としては口から入り体から出て行くだけのもの。辞書作りの場合には、その仕事はどれだけ言葉を集めて定義付けても時と共に言葉は増えていくし、定義を変えていく。終わりなき運動エネルギー(観覧車)の瞬間をすくってるだけのものと。そこに虚しさを覚えつつも、それでもなお全ての情熱を捧げてそれに向かい合う。そんな共通点があるからこそ、まじめ君とかぐやさんは次第に惹かれていく。(すでに惹かれていた?)

 本書のいたるところに出てくるが、このように料理人と辞書作りの仕事のような、物事を言葉で定義して初めて他の物事との共通点に気づける点。それを本書は再認識させてくれた。

 僕は正直料理人や辞書を作る人を上記のように定義付けはできない。というか、気づけない。気づくことができれば選択できる。結果、そういう仕事は虚しいから別のことをする。となるかもしれないが、それでも気づきがない人とは別の人生を歩めることとなる。気づきはない人はただただ、よくわからん虚しさを胸に続けるだけだ。様々な定義づけができることが視野の広さであり自分の選択肢を広げる可能性なんだなと。再認識させてくれた。

・言葉を言葉で定義すること

 本書は辞書作り、言うなれば物事と定義づけを行う仕事がテーマとなっている。本書では、国が辞書を作るよりも、民間企業が作った方が良いとしている。表現の自由が守られるからだと。そりゃそうだ、物事を定義づける言葉。その説明書だもの。用例なんかもあるから、物事の説明書も兼ねている。国が定めた辞書で、教育で皆に丸暗記させる、それを絶対としたら。。。おう怖い

 しかし、辞書は言葉を言葉で定義づけるもの。言われてみると、すごくない?(まぁ挿絵なんかもあるけれど)堂々巡りになりそう。本質的な言葉やルールがありそれを組み合わせているのか(数学や物理で言うところの定理や法則など)辞書を読み潰したくなった。最近はwikiなんかがあるけれど、それとどう違うのかも気になるところ。正直あまり引いたことがない。今度引いてみようかな。。。それに、僕の中の辞書とどう違うか。

 誰もが心の中に自分の辞書を持っている。同じものなんて一つもない。辞書の厚みが違ったり内容が違ったり。

 あなたの心の中の辞書はどうなっていますか。